現場で役立つケアの知識

介護現場ではさまざまな事態が起こる上に、介護される利用者の状況も一人ひとり異なります。介護者が多くの経験を積むことにより、介護に関する知識が蓄積され、より質の高いスムーズな介助に繋がります。入浴介助の際の、体の片方にマヒがある場合の脱衣の仕方も、大切な知識の一つです。その原則は、マヒのある側から服を着てマヒのない側から服を脱ぐ、というもの。この知識があれば、一人で衣服を着脱することができます。足がしっかりと床に着く、安定感のある椅子に座って着脱してもらうことも大切です。介護者は、利用者の手足の動きや反応をよくチェックして、出来ない動作を手伝うようにします。

また、脳血管障害の後遺症として起こる高次脳機能障害についても、知っておくと介護現場で役立ちます。高次脳機能障害とは、記憶や注意、社会的行動などの機能が低下した状態のことです。中でも特定の行動ができなくなる失行や、見えているはずの物を認識したり理解したりすることができなくなる失認は、障害が目に見えにくいこともあり、なかなか周囲に理解されません。このような高次脳機能障害の特徴を知っていれば、作業療法士などの専門家と一緒に対応していくなど、ケアの仕方を改善することも可能でしょう。もちろん、介護現場でこうした知識が活かされるのは、利用者との信頼関係があってこそです。利用者としっかり目を合わせ、必ず笑顔で話しかけるようにして、日頃から共感の気持ちを相手に伝えるようにしましょう。コミュニケーションがきちんと取れていれば、大抵のことはうまくいくものです。